人が生きる原動力って何だろう?


いつも考えている、もうひとりの自分がいる。
夢か希望か恋愛か?仕事、家族、仲間…待ったなしの人生の荒波の中で、自分だけにしかない生きる価値や意味なんて本当にあるのだろうか?

 


2017年の夏、ぼくは、妻と幼きふたりの娘を連れてインドへ旅をする。
日本から遥か彼方のインドの大地に流れるリアルな喧噪は、やがてぼくたちを飲み込もうとしていた。
そんな時、路上の群衆を切り拓くように、重厚な声を響かせる日本人の姿を見た。
ガツンとした衝撃が、ぼくたちの曖昧な存在を打ったかと思うと、小さな不安たちは知らぬ間に消え去っていた。
「バンテージ」こと佐々井秀嶺さんをインドで初めて見た時の印象は、輪郭がくっきりと太い人。
自殺未遂3回、命を狙われ、幾多の修羅場をくぐりぬけ、満身創痍になりながらも、悲壮感はみじんも感じない。泥だらけになり、騙され続けても、腹の底から轟くような笑い声と説法は人々の心をつかみ、生まれたてのような純粋無垢な輝きを放っていた。部屋で横になっている時は、ほとんど動かずに、か細い声でボソボソと話す85歳の普通のおじいちゃんのようになる。人間って面白いと感じた。

 


バンテージに出逢い、ぼくは強くなった、と思う。
なぜだろう?



バンテージの原動力が知りたい。

日本ではなく、インドで過ごす何気ない日常の中に何かヒントがあるのかもしれない。
2018年10月、宝探しに出かけるように、ぼくはカメラを片手に、人生初めてのドキュメンタリー撮影に挑んだ。
精神を超えた泥臭いリアルの向こう側、ウソのような奇跡のような日常。時折こぼれ落ちる使命という言葉。
これはひとりの人間を映し出した、たった9日間の日常の記録だが、そこにこそ見え隠れする何かがあると信じている。それぞれにしか感じることのできない何をつかんでもらえたらうれしい。



監督:竹本泰広